NASCARの歴史を『カーズ/クロスロード』でひも解く…車好きのためのピクサー映画!
今、大ヒット上映中の「カーズ/クロスロード」。クルマ好きからは子供向けの物語と見られがちだが、実は大人にこそ観てもらいたい映画なのだ。今回は、家族で楽しめる「カーズ」シリーズと “NASCAR” の歴史をお届けする。
『カーズ/クロスロード』のあらすじ
主人公はベテラン レーサーとなったライトニング・マックイーン。彼を待ち受けていたのは、最新のテクノロジーによって鍛えられた次世代レーサーたちだった。彼らの驚異的なスピードに取り残されたマックイーンは、レース人生を揺るがす大クラッシュを起こしてしまう。走り続けるのか、それとも新たな道に進むのか。“人生の岐路(クロスロード)” に立たされたマックイーンが、出した答えとは―。
カーズ3から見た、NASCAR の歴史
私が「カーズ3」を大人にこそ観てもらいたい理由は、「ストーリーに込められたカーカルチャーへのリスペクト」だ。ピストンカップのモデルである “NASCAR” の歴史に忠実な登場人物、情景が描かれているのである。
ハドソン・ホーネット
ドック・ハドソンのモデルとなったのは、1951年式ハドソン・ホーネット。NASCAR 黎明期のグランドナショナル・シリーズでシーズン3連覇を果たした、伝説のレーシングカーである。ドライバーのマーシャル・ティーグは、自身のホーネットを「ファビュラス・ハドソン・ホーネット」と名付けた。
『カーズ』シリーズのドックと行く末は異なるが、レースカー時代の遍歴はほぼ一致している。つまり "54年の大事故" も実際にあった。しかし劇中で描かれているほど深刻ではなかった。ハドソン社がナッシュ=ケルビネータ社に吸収合併されたことで、ホーネットはレース界を去った。その功績は今に語り継がれている。
スモーキー・ユニック
ドックの師匠スモーキーは、初期の NASCAR で活躍したメカニック「スモーキー・ユニック」がモデル。彼はティーグがオーナーを務めるストイックカー チームに参加した。ここで彼がチーフメカニックとして手掛けたのが、ハドソン・ホーネットである。ドックを勝利に導いたキャラクターに相応しい人物だ。
彼はデイトナビーチで "Best Damn Garage in Town(街で一番クソッタレなガレージ)" をキャッチコピーに「Smokey's Automotive Service」というトラック修理工場を経営していた。ガレージの看板は『カーズ3』で再現されている。
キャラクター化された彼の車体は、1947年式 ハドソン ピックアップだ。中でも2011年にオークションにかけられた個体と完全に一致する。ドアのサインから、ディーラーのパーツ運搬車だったと思われる。
スモーキー本人とは直接関係ないが、ホーネットと同じハドソン社の車両であること、彼がガレージをオープンした 1947年式であること、そして良好な状態の262インライン6 エンジンを積んだ個体であることなどが、選ばれた理由だろう。なおドアのサインは彼のガレージのロゴに変更されている。
『カーズ3』は大人にこそ観てほしい!
『カーズ』の真の魅力を知っていただけただろうか。この作品には、制作陣のクルマへの並々ならぬ愛が込められているのだ。今回挙げたのは、その一部に過ぎない。『カーズ』シリーズを、子供向けの馬鹿バカしい映画だと思っているあなたにこそ、ぜひとも観てもらいたい!きっと劇場で涙するはずだ。